テンペについて

テンペについて

テンペの栄養成分

テンペ菌の話(世間であまり書かれていないこと)

 

 

テンペについて

インドネシア発祥のテンペは、その栄養価の高さに加え美味しさや料理のしやすさ、メニューの幅の広さも相まって、今や世界中で愛される発酵食品です。

環境問題やアニマルウェルフェアの観点からプラントベースフード(植物性食品)を選択する人々や、健康上の理由から食の制限をもつ人々に、特に好まれています。

 

元々は、茹でた大豆をハイビスカスなどの葉で包んで発酵させたものが伝統的なテンペのようですが、現在は大豆だけではなく小豆やひよこ豆など違うお豆で作ったり、キヌアやアマランサスなどのスーパーフードを混ぜたり、世界中のメーカーがそれぞれ工夫を重ね、様々なテンペに出会えるようになりました。

 

また、発祥地のインドネシアをはじめとしたアジア各国では「Tempe」と英語表記されますが、その他の国々では「Tempeh」と表記されることが多く、これもまた「テンペ」を「テンピー」と発音させないための工夫のひとつと思われます。こういった進化からも、テンペが世界に広がっている様子がうかがえますね。

 

テンペの栄養成分

テンペの栄養価は非常に高いため、もっと日本の食卓に日常的に登場するほど浸透すればよいのになと、願っています。

テンペの栄養成分.png

たんぱく質はツナ缶やお肉と同等で、ビタミン類やミネラルも豊富なうえ、食物繊維もたっぷり含まれています。

⇒良質なたんぱく質で健康的な体づくり、ビタミン・ミネラル・食物繊維は体調を整える!

 

ビタミンB群(ビタミンB6、葉酸など)や食物繊維、GABAは、ゆで大豆の状態からテンペ菌で発酵させることで、大幅に増加します。

⇒ビタミンB6は免疫機能の正常な働きやホルモンバランスの調整、赤血球の合成など大活躍!

 

「大豆」+「発酵」の組み合わせならではの、大豆イソフラボン、大豆ペプチド、大豆オリゴ糖も摂れます。

⇒がん予防や抗酸化に役立つイソフラボン、筋肉を修復するペプチド、善玉菌を増やすオリゴ糖

 

そしてもちろん、発酵食品としての恩恵にも与れます。

⇒腸内環境を整える、消化吸収しやすく胃腸の負担減、大豆の植物毒(反栄養素)も軽減される

 

こんなに栄養価が高く、料理の幅も広くて美味しい食材を日々の食生活に取り入れないなんて、もったいない!

ぜひ様々な世代の方々にお召し上がりいただきたいです。

 

 

テンペ菌の話(世間であまり書かれていないこと)(2023/5/5 杉山幸)

 

テンペは、テンペ菌で発酵させます。

テンペ菌とは、「クモノスカビ」の1種であり、学名は「Rhizopus」、テンペの主要製造菌としては、リゾープス菌の中でも「Rhizopus oligosporus」が広く浸透しています。

 

クモノスカビは、「菌界・接合菌門・接合菌綱・ケカビ目・クモノスカビ科」という属性が示すように、いわゆる「カビ」です。

クモノスカビについては、検索すると詳しい情報が出てきますので 、そちらをご確認いただくとして、ここではあまり書かれていない特徴について記載したいと思います。

  

テンペは「納豆」とよく比較されますが、食品微生物のカテゴリーをざっくり「細菌類」「カビ類」「酵母類」に分けた場合、テンペ菌は「カビ類」、納豆菌は「細菌類」になるので、実際はカテゴリーが違うものです。

 

そして、微生物の話をする時にひとつ大事なポイントがあるのですが、それは「好気性」か「嫌気性」かという性質です。

つまり、空気(酸素)がある環境で増殖・生存する菌と、空気がなくても増殖できる菌に分けられるということです。(もっとくわしく言えば、「通性」や「偏性」に分けられます。)

こうじ菌や納豆菌、酢酸菌などは好気性、ビフィズス菌は嫌気性、乳酸桿菌、乳酸球菌は空気があってもなくても生きていける通性嫌気性、ということになるようです。

 

さて、テンペ菌は好気性と嫌気性のどちらでしょう?

 

それは、製造方法を考えればすぐわかりますね。そう、「好気性」です。発酵させる時に必ず空気の通り道を作りますよね。 

 

では、ここでまた大事なことを考えてみたいと思います。

腸内に空気(酸素)はありますか?

 

 

答えは、「ほぼ無い」です。

 

位置的にみて、小腸には多少酸素がありますが、大腸になるとほぼ無酸素状態ですね。よく、「生きて腸まで届く」とか言いますが、仮に届いたとして、その菌の性質を考えれば、腸のどのあたりにすんで、働くのか、ということが理解できます。

 

 

それからもう一つ、無視できない点があります。

 

それは、食べ物は胃を通過する、ということです。

 

胃酸はpH1~2ですが、一般細菌の酸性育成限界値はpH5.0~5.5、カビはpH2.0です。つまり胃を通過する間に、通常はほぼ不活化してしまいますね。

  

ここまでのポイントをまとめると、以下のようになります。

 

・テンペ菌(クモノスカビ)は好気性

・腸内はほぼ無酸素状態

・カビは胃酸でほぼ不活化

 

 では、これらを踏まえて、「テンペ菌を生(非加熱)で摂取することに意味はあるのか?」ということを考えてみたいと思います。

 

仮に非加熱の生テンペを食べて、テンペ菌が胃酸に勝ち、腸まで届いたとします。

でもテンペ菌は好気性なので、ほぼ無酸素状態の腸内で直接的な働きは期待できないどころか、生存もできませんね。

 

ということは、テンペ菌を生で摂取すること自体に、たいして意味は無いのです。

(自分でこの仮説を立てて食品微生物学の専門家(大学教授)に問い合わせたところ、同じ見解でした。)

(善玉菌のエサになるとか、間接的な役割はあると思います。)

 

以前どこかで、テンペ菌を飲食物にそのまま振りかけるという記述をみたことがありますが、残念ながら意味は無いです。

 

じゃあ「テンペを食べることに意味はあるのか?」という疑問がわきますか?

 

答えは、「おおいに意味はある!」です。

 

なぜか。それは、テンペ菌が発酵の過程ですでに素晴らしい働きをして、その恩恵に与れるからです。

(発酵食品のメリットについては、長くなるのでここでは割愛します。)

 

 「テンペを加熱調理すると菌が死んじゃう」と気にされる方がいらっしゃいますが、私の理解ではテンペ菌の存在意義は発酵過程にありますので、加熱・非加熱はあまり気にせず、自由に召し上がっていただければと思います。

 

余談ですが、市販のテンペは真空パックされているものがほとんどですが、できたてのあのフワフワの真っ白い菌糸が真空によりペチャンコになりますよね。さらに、ブランチングされている商品の中には白さまでなくなり、茶色い塊になっているものもあります。 それがために、「あんなのはテンペではない」とこぼしている方もいらっしゃいましたが、

 

「それもテンペです!」

 

発酵過程でテンペ菌が大いに活躍して、いちばん良い状態でパッキングされているだけのことです。(そのまま放っておくとどんどん発酵が進んで食べにくいものになってしまうため)

もちろんそれぞれのメーカー、商品によって味、風味、素材、製造方法の違いはありますので、それこそお好みで選んでいただければと思います。

 

最後に、、、

ではなぜ当店がパッキング後の加熱処理をせずに生テンペの状態で販売しているか、というと、加熱処理にはそれなりの設備、時間、人的リソースが必要となり、余計な経費がかかる(原価が上がる=売価も上がる)ということと、世の中には様々な食習慣、イデオロギーなどあり、例えば季節や体の状態によって陰陽を意識しつつ食べる方もいらっしゃるので、できるだけどうとでも使える状態にしておきたい、ということもあります。(選択肢の提供)

 

店主の私もまだまだ微生物、発酵に関しては勉強中ですが、テンペの情報があまり多くない(あっても似たり寄ったり)状況下で、よく調べもしないうちに好き勝手言う自称スペシャリストがちょこちょこ出てきているようですので、いったんまとめてみました。

 

ご参考になれば幸いです。